パーキンソン病の運動症状と非運動症状

平成27年6月14日 順天堂大学名誉教授 水野美邦先生

  水野でございます。8年前まで順天堂大学におりましたが、その後あちこちで外来の患者さんの診療をしております。今日は京都四条病院の久野先生と共にお話しさせて頂きます。最初にパーキンソン病とはどんな病気か、その後運動症状、非運動症状に対してどの様な治療、対策が行われているかをお話ししたいと思います。

「パーキンソン病」とはどんな病気かは皆さんよくご存じのとおり、1817年ロンドンの脳外科の開業医ジェームス・パーキンソン氏が6名の症例を報告した事から、発見者の栄誉を称えてその名がつきました。パーキンソン病は主に高齢者の病気ですが、20~80代の方の発症はアルツハイマー病に次いで多いです。しかしパーキンソン病では死亡しません。パーキンソン病には色々な治療薬があり、そういう面でアルツハイマー病より恵まれていると思います。そうは言っても、皆さんは外に症状が現れるので辛い思いをなさっているのはよくわかります。

パーキンソン病には4大症状というのがあります。震え、動作緩慢、姿勢保持障害、筋肉の硬さによる固縮です。どこが悪くてこのような病気になるかというと、中脳にある黒質です。黒質の色が黒い理由は神経細胞の中にニューロメラニンという黒い色素が溜まっているからです。ここの神経細胞がだんだん死んでいくのがパーキンソン病です。パーキンソン病患者の黒質を見ると色が褪せていっているのがわかります。黒質の神経細胞はドーパミンという物質を作る事がわかっています。したがってドーパミンの濃度は減ってくるけれども、ドーパミンを外から補えば又元の状態になるという事です。

 もうひとつの特徴は黒質の神経細胞が委縮していく途中で、残っている神経細胞の中にレビー小体という封入体があってその中にαシヌクレインという蛋白が溜まっているということです。黒質がどこにあるかをスライドでお示しします。これが私達の脳です。ここに小脳があるのですが色々な運動の時に大事な働きをします。脳を真中から割って内側を覗いてみます。ここに見えるのが脳幹です。脳幹は血圧や呼吸を司る非常に大切な場所なのです。脳幹の1番上の場所に中脳があります。この中脳を輪切りにしてみると肉眼的に黒く見えるここが黒質といわれる場所です。ここの神経細胞がだんだん減っていくのがパーキンソン病です。脳の神経細胞というのは他の場所に繊維を送っているのです。どこに送っているのかははっきりわかっていまして、黒質の神経細胞は線条体といわれる場所に繊維を送っているのです。繊維の中をドーパミンが送られていく訳です。したがって線条体という場所にドーパミンが1番溜まっていく状態になるのです。これが黒質から来た終末でこちらが線条体にある神経細胞の受容体です。神経細胞と線条体にある神経細胞とは直接くっついているわけではなくて隙間があります。その隙間の所をドーパミンが出ていって次の神経細胞にくっつける。その事によって私達は話している時、歩いている時などにスムーズな運動ができるわけです。

多くの方々がメネシットとかマドパーとかのLドーパ製剤を飲んでおられ、それは脳の中に入って黒質に行くとドーパミンに変わるのです。ドーパミンは元々神経細胞にある物質ですから、それを補う事によって症状が良くなります。その事を念頭において頂きパーキンソン病の治療がどのように行われているかをお話しします。                                            

まず高齢者か非高齢者、また認知症があるかどうかで分けます。今の潮流では、65歳以上が高齢者、それ以下を非高齢者としています。                    非高齢者で認知症のない場合にはまず麦角系、非麦角系のドーパミンアゴニストで治療します。高齢者、または認知症のある方はLドーパで治療を始めた方がいいとされています。どうしてかと言いますと、高齢者の方は非麦角系のドーパミンアゴニストはまずLドーパよりは効き方が軽い、そして色々な副作用を起こしやすいのでLドーパで対応した方が良いとされているからです。若い方はどうしてLドーパで始めないかというと、Lドーパから始めた場合、手足がくねくね動く不随運動の副作用が出てくるので、その為に最初は非麦角系のドーパミンアゴニストから治療した方が良いだろうと考えられているのです。

ぜひ皆さんにご自分が飲んでいらっしゃるお薬を覚えていただきたいのです。Lドーパ製剤にはカルコーハロとかドパコールとかパーキストンとかレプリントンとかジェネリックのものが増えてきていましてそれを飲んでいらっしゃる方もいると思います。Lドーパ製剤は体内に入った時肝臓とか消化官でドーパミンに変わってしまい、脳に入るLドーパは非常に少なくなってしまう。それを防ぐために脳に入らない末梢性のLドーパからドーパミンに変わるコースを阻害する役、それがドーパ脱炭酸酵素PD実剤なのですね。皆さん知らずに飲んでらっしゃると思うのですがそれはちっとも構わないです。 

それからもうひとつ、非麦角系のドーパミンアゴニストというのはスライドで示したように非常に沢山の薬があります。「非麦角系」と書いてあるのは日本では最初に麦角系のアゴニストから使われたのですね。麦角系とは麦角という構造を持った物質なのですけれど、長い期間使っていると心臓の弁がおかしくなるとわかり、現在では非麦角系のアゴニストを最初に使うようになっています。最初に使うのは65歳以下で認知症のない患者さんに使っています。それからエフピー錠とかコムタンとかトレリーフとかの薬物はLドーパを長い間服用してウェアリングオフという症状が出てきた患者さんに使います。シンメトレル、アーテンは昔からある薬です。最近アーテンは認知症に似た症状を起こすという事であまり使われていないのですが、それは1日3錠以上服用した場合で1錠位なら安全な薬だと考えています。そしてパーキンソン病の症状をかなり良くしてくれるので捨てがたい薬と思っています。

ご覧のようにパーキンソン病の薬は沢山あるのですが、最も効くのはLドーパ製剤です。しかし長く飲んでいると効いている時間がだんだん短くなっていき、効いている時間に合わせて何回も飲まなきゃならない、10年以上経つと3時間、4時間しか効かないという患者さんが増えてきます。その場合は3~4時間おきにLドーパを飲んで頂くことになります。Lドーパを飲み続けていると将来的に効かなくなるのではとおっしゃる患者さんが多いですがLドーパは死ぬまで効きます。だから心配はないですが早く切れるようになった時に不安になられます。   

パーキンソン病の患者さんは発症から20~25年生きてらっしゃる、最初の5年は誰が治療してもうまくいくのですね、Lドーパを服用するのは1日3錠までで大丈夫、しかも食後でいい。ところが発症から5~10年経つとLドーパの効果が薄れてきて、1日5~6回飲まないといけない、この時期は症状の動揺があってウェアリングオフが出てきます。10年以上経ちますとLドーパの継続時間はもっと短くなってきます。この時期にはすくみ足、小走り歩行、転倒、骨折、認知症、肺炎、腸閉そくなど色々な症状が出てくるのですが、いずれも気をつければある程度予防できます。すくみ足から転倒、骨折すると寝たきりになる場合があるので、骨折しないように注意していただきたいです。

                                                 このスライドは埼玉県の方です。オフになると左足に重しをつけたようになって痛むとのことです。左側ばかり痛み、薬が効いてくるまで時間がかかります。メネシットを飲むと更に動きが悪くなる。夜中に足が丸まって痛む。ものがふたつに見える。こういった患者さんにどういった対応をしたらいいか。症状が悪くなる時には運動症状だけでなく、この様に色々な症状が出てくるのです。薬が効いている時は良い状態(オン時間)なのですが短時間しかない。従って症状が悪くなったら薬を飲む、歩行がゆっくりになってきたら薬を飲むように話しています。効いてくるまで時間がかかるのは吸収に時間がかかるからなので、薬を水に溶かして飲んで貰います。足の痛みはオフの症状です。オフになりますと身体のあちこちが痛む方が沢山います。痛くなったら薬を飲みましょう。指が丸まる、これも薬が切れたときに起こるジストニアという状態で、やはり薬を飲みましょう。

また、複視という症状が時々あるのですが、近くのものを見ると二つに見える、遠くのものを見る時は一つに見えるという方が多い。近くのものを見る時には目を寄せるのですが、その力が弱くなっている患者さんがいます。これはなかなか治療が難しいのですが、眼科でプリズムレンズを出して下さる所があります。片方だけの目で見ていると隠した方の視力が悪くなります。ひどい時には片方に眼帯をかけるのですが時々眼帯を左右替えることが必要です。

 それからLドーパを飲んでもなかなか効かないという方がいらっしゃる。Lドーパは腸に行かないと吸収されないです。Lドーパはアミノ酸の一種ですが、アミノ酸は食事から

沢山出てきます。そして小腸の上部に特別に吸収される部位があってそこから吸収される。従って食事の後にLドーパを飲むと通る場所が同じですから、当然Lドーパの吸収が遅れるわけです。薬が効いてくるのに30分以上時間がかかるという方は食事の直前にLドーパを飲んでみて下さい。直前というのは食事の準備をして食べられるようにしてまず薬を飲む事です。それから食事をすると食事からアミノ酸が出て来る前に薬がうまく吸収されます。 

Lドーパがどうしてこんなにすぐ切れるのかというと、例えば車に例えてみますと最初の間はガソリンタンクが普通の車の大きさでタンクをいっぱいにすればある程度は走れる訳です。ところがパーキンソン病になるとだんだんガソリンタンクが小さくなってしまいます。その為にガソリンをいっぱいにしても走る距離が限られてくる、これがウェアリングオフの出てくる考えです。

5年以内の患者さんは1日3回のLドーパの服用でもほとんど1日中良い状態が続く、ところが6年から10年経ってくると次のLドーパを飲む頃症状が少し悪くなってくる。さらに10年以上経つともっと短くなって3時間おきに飲まないといられない。こういう経過をたどっていく病気です。

 今全国のあちこちで患者さんの症状を伺っています。その結果の一部ですが発症から5年以内の患者さんはウェアリングオフ率が23%、ところが6年から10年経つと63%、11年以上では80%の方が次の薬を飲むまでに具合が悪くなっています。ただし薬が効いている時はとてもよくなられます。ウェアリングオフがおきたら(Lドーパが切れたら)薬を飲むという事が肝心です。 

 夜中や朝の動きが悪い人は夜中にトイレに行った時に飲んでいれば朝の動きが良くなります。Lドーパはいい時は30分位で効いてきますからそれに合わせて飲んで頂く。色々な補助薬を試す、Lドーパが1錠で効かない場合は増やして下さい。

ウェアリングオフを防ぐ補助薬としてはコムタン、エフピー等沢山ありますが、1番効くのはLドーパです。

 Lドーパを1日多量に飲むと身体がクネクネ動くジスキネジアが起こる事があります。身体がクネクネしだしたら、まずエフピー錠を中止してみる。エフピー錠は不随運動を少し強くするのですね。それで駄目だったらコムタンも中止してみる。そしてLドーパの1回の量を減らして、間隔を短くする。ジスキネジアが出始めると、Lドーパ製剤1回1錠でも不随運動が出る患者さんがおられます。そういう場合どうしたら良いか。半錠では量が少なすぎて効かない四分の三錠が良いと考えています。1日分のメネシットを500mlの水に溶かしてしまいます。メネシットは水に溶けますからね。例えば1日6錠飲む人はペットボトルに目盛りをつけて8回に分けて飲む、そうすると1回に四分の三錠ずつ飲む事ができるのですね。実際患者さんに勧めているのですが、面倒くさくてなかなかできない方もいらっしゃいます。Lドーパはこうしてある程度ご自分で調整なさってそれでもうまくいかない時には主治医に相談して下さい。

「すくみ足」は多くの患者さんに出るのですね。80%の患者さんはLドーパが切れた時に起こるとおっしゃっています。ところが20%の患者さんはLドーパが効いている時にも起こります。これは良い治療法がないのですが、Lドーパが切れた時に起こる場合はLドーパを飲む間隔を短くして下さい。そしてすくみ足が出てきたら太腿を上げてみて下さい。皆さん階段を上がるのは上手でしょう?階段を上がる時には足を前に出さず腿をあげて上にあがるでしょう?そうすれば上手く歩けるのです。すくみ足になった時は「腿、腿」と言いながら足を前に出さず上にあげる、上げた足を少しだけ前に出せば又歩けるようになります。すくみ足のある方はこういう歩き方を1日10分間練習してみて下さい。

「よだれ」に悩んでいる方がいらっしゃいますが、よだれは自律神経症状でなく運動症状です。普通の人はなぜよだれが出ないかというと、無意識のうちに呑み込んでいるのです。無意識のうちに呑み込むという事が出来なくなるのがパーキンソン病です。パーキンソン病の方は無意識に何かをすることができないですから、唾液も意識をして飲み込まないといけない。どうしても意識できない場合は飴をなめたりガムをかんだりして下さい。

   「非運動症状について」   

次にパーキンソン病の非運動症状についてお話したいと思います。多くの方がパーキンソン病の症状とは思ってない非症状運動症状があります。皆さん、しょうがないと思ってらっしゃるか、薬の副作用と諦めていらっしゃる。非運動症状はこんなに沢山あります。

まず自律神経症状です。便秘、夜間ひん尿、インポテンツ、起立性低血圧、足のむくみ、夜間の発汗、夜中に玉のような汗をかくといった症状です。それから感覚障害痛みですね。Lドーパが切れてくると身体のあちこちが痛む、腰痛の方もとても多い。匂いがわからなくなる、味がわからなくなるとういう方も多い。睡眠障害では、レム睡眠時の行動障害、不眠、むずむず足症候群、布団に入ると足がむずむずしてなかなか寝付けないといった合併症があります。覚醒障害では、昼間眠くてしょうがない、ドーパミンアゴニストを使っていると眠気が出ることがありますが、Lドーパでも出る事があります。食事をするとしばらく寝ざるをえないのですね。

感情障害としては不安状態、病気の事ばかり考えてしまう、それが高じるとうつ状態になり、朝起きても今日1日何をしていいかわからない、食欲もなくなり、不眠に陥る。

それから疲労という症状ですね。多くの方がスーパーで歩いていても、台所仕事をしていても10分位で疲れてしまう。「パーキンソン病の疲労」と呼ばれている有名な症状です。しかし患者さんはその事をわからないでただ疲れる事を訴えられる。なかなか良い治療法が無いので、我慢して頂いて休み休み仕事をしましょう。台所仕事をしていて疲れたら椅子に5~10分休んで頂く。ほんの短時間休憩すると又その動作が続けられます。

精神症状としては、幻覚、妄想等色々あります。最後に30~40%の患者さんが認知症になるといわれています。これには幾つかの対策があります。

そして便秘には本当に多くの方が苦労してらっしゃる。パーキンソン病の運動症状が現れる前から便秘である、若いころからず~っと便秘で60歳位に手の震え等のパーキンソン病の症状が現れる。対策としてはそんなに量は多くなくていいので3食生野菜を食べて、3水を飲みながら食事をする。これだけでは多分駄目なので寝る前に緩下剤を、お通じをしたいと思う時だけでなくて毎晩飲む。そうして2日に1回位お通じがあったら同じ量を毎晩飲んで頂く。それでも駄目な場合はガスモケン、ナウゼリン等、腸の動きを良くする薬を飲んで下さい。腸の動きは迷走神経なのですがパーキンソン病の方はいち早く障害されるのです。

それから夜中に何回もトイレに行く。ドーパミンがきれるとひん尿になります。大体の方は夜中に薬を飲んでおられないからですね。夜中のトイレが2回までは正常と考えます。3回以上行かれる方は、昼3時以降利尿作用のあるお茶、コーヒーは飲まずに、白湯で我慢して下さい。寝る前にひん尿を抑えるベシケアを飲んで頂く事もあります。眠れないと何回も何回もトイレに行くわけですから睡眠薬が効く場合もあります。寝る前にLドーパを飲む事もあります。男性の場合、前立性肥大の検査を一応やっておく必要があります。

次に起立性低血圧と、低血圧です。パーキンソン病の方はどちらかというと血圧が低めです。降圧剤を飲んでおられる方が多いますが、この頃は120~130位の低めに調整するのがいいといわれますが、パーキンソンの方は大部分が60歳以上です。昔から年齢プラス90が正常とされていて、例えば60歳の人が90を足して150になってもそう心配は無い。ところが一部の患者さんは立つと血圧が100をきってしまう、これを起立性低血圧と言います。全く症状の起こさない人もいますが、めまい、失神を起こしてしまう方もおられます。治療としてはメトリジンを1~2錠、朝昼の食後に飲む。

それから食事性低血圧、食事をすると気分が悪くなる。食事を始めるとお腹への血流が増してきて、脳へ行く血流が少なくなりその為に血圧が下がる。どうしたら良いかというと頭を低くして横になる。これもパーキンソン病の自律神経障害に関係した症状のひとつです。

そして発汗。玉のような汗をかく。夜中に多いです。寒い時でも同じです。夜中に薬を飲んでいないから体内のドーパミンが下って起こるのです。昼間の発汗はむしろ低下している。これは心配のない症状ですが良い治療法もない、耐えるしかありません。

むくみ、主に足首のむくみですが、ドーパミンアゴニストの副作用の場合が多いです。

手や顔にはむくみが無い事が大部分です。内臓が悪くてむくむのではありません。むくみのひどい人は一応、心臓、肝臓、腎臓等の検査をしますが、ほとんどが正常です。心配は無くドーパミンアゴニストの副作用であるから見守るしかない。アゴニストをやめればむくみはひいていく。アゴニストがやめられない場合は利尿剤を使います。

痛み、Lドーパの作用がきれてくると身体中が痛みを感じる。その場合Lドーパを飲むと痛みは消えます。ところがLドーパを飲んでも痛みが消えない場合がある。多くの方は朝起きた時から寝る時まで1日中身体が痛む。腰であったり下肢であったり。これは腰の合併症なのですね。椎間板ヘルニア、脊椎の圧迫骨折、脊椎狭窄症等。MRIをすぐ撮るとわかります。この場合リリカ、ロキソニン、ボルタレン等の痛み止めを2~3か月飲んで頂くとだんだん痛みが治まってくる方が多いです。

匂い、パーキンソン患者の80%は匂いがわかりにくい。その内の半分の方は匂いがほとんどわからない。嗅覚低下というのは運動症状の5年位前に現れます。良い治療法は無いです。嗅覚が低下してくると味覚も低下してくる事があるのですね。臭覚がどこで認知されるのかですが、鼻腔の粘膜の上の方に臭神経があります。ここから神経が脳の方に走っているのですが、こういう所にαシヌクレインが溜まってくる。それが原因で障害が起きると考えられています。

不眠も比較的多い症状です。私達は睡眠薬をお勧めするのですが、睡眠薬を飲むと頭がおかしくなるのでは?習慣性になるのでは?と心配してお飲みにならない患者さんが多いです。今使われている睡眠薬は習慣性になる事はないです。毎日毎日お飲みになった方がいい。自然に寝られると自然に忘れてきます。自然に忘れたら忘れたままにしていい。自然に忘れるまでは毎日睡眠薬を飲んでよく休んで頂く。よく休むという事は翌日の動きを良くするひとつの大事な認識ですね

夜中にトイレに起きると朝まで寝付けないという方がおられます。その場合どうするかというと、ハルシオンという作用時間の極めて短い睡眠薬がある。3~4時間しか効かない。これでしたら夜中3時位まで飲んでも大丈夫です。

レム睡眠行動障害はこちらから聞かないとわからないのですが、夢を見て大声を出したり、手足を動かしたりするのですね。これは別に脳がおかしくなるとかそんな事ではないのです。パーキンソン病の患者さんにはかなり高率にみられる症状です。ご本人は寝ておられるから全然気がつかない。でもご家族がびっくりして気持ち悪いとかおっしゃる。そういう場合は、リボトリールを寝る前に1錠飲む。患者さんは飲んでも飲まなくてもどっちでもいいですが、ご家族が驚く場合には飲んで頂く。ひどくなると、ガラスを割ったり、壁に手を打ちつけて怪我をなさったりする、そうなると薬をどうしても飲まないといけない。これも運動症状が出てくる前に出る症状です。

昼間眠くてしょうがない、ご飯が終ると1~2時間寝てしまう。ひどくなると食べている最中に寝てしまう。たいていの方は眠くなる前に眠気がきますが、眠気なしにいきなり眠り込んでしまう、これを睡眠発作といいます。これが車を運転中におこると事故を起こす可能性がある。アゴニストの副作用ですがLドーパでも眠気は起きると。その場合マイラートキランザーを使っておられたらやめるのが大事な事だと思います。

不安、これは患者さんの約50%の方がかかえています。将来どうなるかが心配、子供の世話になってしまうのか、寝たきりになるのか、たえず病気のことばかり考えてしまう。そういう方には明るく前向きに生活する事を指導します。パーキンソン病の進行は極めて遅いです。飲む間隔が短くなりますが、Lドーパはいつまでも効いています。それから配偶者と何かを一緒にやる、旅行、ゴルフ、買い物、食事、オセロ。オセロがなぜここに出てくるのかというと、オセロは頭を使うので、ある程度認知症の予防になるのです。 

不安が高じると鬱になる事がある。私達が鬱の患者さんをどうやって見出すかというと、パーキンソン病は比較的軽いのに色々な症状の訴えが多いのですね。そのような場合鬱を考えます。患者さんに「あなたは鬱ですか?」と聞くと「鬱かもしれない」とおっしゃる方は1%しかおられない。大体の患者さんはご自分が鬱である事を否定なさいます。ですから他の方向から薬を患者さんに出さなきゃいけないのです。

疲労というのは最初仕事をしていても10分もするとすり足になってくる。スーパーへ行くと途中で休まないではいられない、台所仕事をしていると10分位で疲れてくる。字がだんだん小さくなってしまう。これは責任要素が実はわかってないです。抗パーキンソン病薬の増量で少し良くなることはあるけれども、本当の原因はわからないのです。疲労が出てきた時には休み休みやる必要があるという事です。

 幻覚は治療を始めてから起きる症状です。薬の副作用がきっかけになる事が多い。最初は誰かがそばにいるような気配がする、その内、夜中にトイレに行った時途中で動物が廊下にうずくまっている、大勢の知らない人が出入りしている、こういった症状が出てきます。その時は、抗パーキンソン病の薬を効果の低い順に中止していく。最後までLドーパは残すのですね。

 認知症が出てくるのですが全員には出ません。せいぜい40%位で徐々に出てきます。だけど「物忘れ」は認知症でない事が多い。物忘れは非常に多くの方にあって、物忘れだけの方には、大事な事はノートに書いて1日に何回も見るのです。ご飯を食べるテーブルに置いて食事の度にノートを見る。そうやって記憶を新たにしていく事によって「物忘れ」はある程度防げます。パーキンソン病の認知症は込み入った事を順序立てて考える事の障害。例えば旅行の計画、どこで休んで、何時の電車に乗るか、順繰りに計画を立てていく事ですね。主婦の方なら夕飯の買い物の手順がわからない。夕飯にこういう物を作る、例えばナス、胡瓜と買う物が決まっている、ところがその手順がわからなくなり、同じ物を何回も買ってしまう。こういう症状が出てきたらヘルモフロトという薬がありま

す。幻視の予防にもなり、反応が遅くなってきたのも少し良くなり、興味が低下しているとか、決め事をする能力低下にもこれをお使いになると良いと思います。

  最後に日常生活の注意点を手短にお話しします。あまり注意する事はなく、普通の生活を送ればよいというのが私の考えです。家に帰ると歩きにくい事が多いですね、外ではわりあい上手に歩いておられるのですが、家の中ではすり足で歩き出します。外では少し緊張していらっしゃって上手に歩ける。帰宅するといっぺんに緊張がとけてすり足になる。軽い緊張はドーパミンの出方を良くする作用があります。家に帰ってもしばらくは綺麗な服を着て上品な歩き方をして配偶者を喜ばせようとしましょう。すり足になると物につまづいたり、すくみ足になって最悪骨折する可能性がある事を覚えておいていただいたら。家の中が一番危ない、絶対に転ばないと強い決心をする事が大事です。   家の中の平らな所が一番苦手でらっしゃる、その為にはどうしたらいいか。例えば電話が鳴ってもすぐ飛んで行かない、玄関のチャイムが鳴っても飛んで行かない。飛んで行くとすり足になる。外に来ている人はたいてい足が丈夫ですから少しくらい待たせておいていいんですよ。鳴ったらどうしたらいいか、まずゆっくり椅子から立ち上がって一呼吸おくのです。その間に頭の中で「かかと、かかと」と言いながら、踵から足を出す。ここが大事です。姿勢よく歩くと気分が晴れ晴れしますね。昔はこの様に歩いていたのです。パーキンソン病であることがわからないと奥様やご主人が喜びますね。毎朝10分だけこういった歩き方を練習する事が大切です。腿を上げるか、踵を上げるか、どちらかでいいです。腕を振って顎を引いて、正面を見て下さい。練習中に倒れる事があるので配偶者がいたら一緒になさった方がいい。

ふたつの事を同時にしない。例えば頭の中で何かを考えながら歩くと足がすり足になる。ですから歩く時には足に神経を集中して歩く。包丁で野菜を切っていると、手に神経が集中して、足でしっかり立つという事に対しての神経があやふやになる。だから後ろへ倒れてしまう。それから夕飯のお盆を持って歩こうとするとこぼしちゃいけないと思うから、足に対する神経がおろそかになって転んでしまう。洗濯物を両手に抱えるとやはり足に神経がいかなくなり後ろへ倒れてしまう。では、どうすればいいか、配偶者に頼む。主婦がしていた仕事もお医者さんからしてはいけないと言われたと頼む。パーキンソン病になってもやってはいけない事はない、これまでのライフスタイルを踏襲していらっしゃればいい。

Lドーパ製剤の飲み方は症状に合わせて自分でも少し工夫してほしいですね。配偶者の方は買い物に付きあったり、時には食事に一緒に行く。余裕ができたら旅に出る。適度な緊張が良いのですね。最初は日帰りで、自信がついたら足を延ばす、さらに海外へ出かけたり、毎日を楽しく過ごして頂きたいですね。楽しいことをなさるとドーパミンの出方がよくなります。

ご清聴ありがとうございます。

 

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