全国パーキンソン病友の会              京都府支部 第33回定期総会記念講演 『パーキンソン病の最新の研究と 薬剤を中心とした治療』

日時 平成28年4月17(日)13:30~ 場所 京都社会福祉会館3階   (京都市上京区堀川丸太町南入) 講師 国立病院機構 宇多野病院   院長   杉山 博 先生

 

今年度の友の会の活動も、定期総会

 

記念講演で幕が開きました。今回、講演をお願いしたのは、京都における難病治療の拠点である宇多野病院の院長、神経系疾患の専門医として、実績・経験豊かな、杉山博先生です。

 

 講演会は、総会に先立って行われました。友の会による進行で、まず、支部長のあいさつがあり、司会より先生が紹介されました。

 

 

 

杉山先生のあいさつ

 

 

 

皆さんこんにちは。宇多野病院の杉山です。宇多野病院の宣伝のようですが、当院には桜の木がいっぱいあります。その中には、八重もあるので桜が5月頃まで咲いていることが多いです。また、鬱金(ウコン)桜といって、黄色い花を咲かせるものもあって、時間が経つとピンクのきれいな色になります。宇多野病院の入り口付近の桜は、3月初旬から咲き始めます。

 

それでは、内容に入りますが、本日は復習のつもりで聞いて頂ければと思っています。

 

 

 

京都府の難病の疾病別分類

 

 

 

京都府で特定疾患受給者証を持っておられる方は神経系疾患が3割近くで、続いて消化器系、免疫系疾患の方が多くおられます。

 

パーキンソン病の発症ですが、年齢別頻度では、50代、60代に多いといわれています。最近はもっと高齢の方が多いようです。我が国の罹患者は、赤ん坊からお年寄りまで全国民を対象にすると、およそ10万人に、100人から150人くらいで、高齢では150人に1人の割合になります。世界中で起こる病気で、人種や地域による違いは明確ではありませんが、多少白人に多く、黒人には少ないともいわれています。

 

 

 

 

主な症状は

 

1) 無動(動作緩慢)2) 強剛(固縮)3) 静止時振戦、4) 姿勢反射障害

 

これらが、パーキンソン病患者の身体の動きに見られる、典型的な4つの症状です。

 

初期診断基準()

 

1) 無動(動作緩慢)2) 強剛(固縮)3) 静止時振戦

 

 MDS (国際パーキンソン病運動障害疾患学会)において、診断基準がちょっと変わったようで、動作がゆっくりな事が一番大きな症状で、それから強剛(固縮)か振戦のどちらか一つあればパーキンソン病と診断します。姿勢反射障害は初期診断での決め手にはなりません。比較的早い時期には起こってこないので、病気の最初からこれがあると、むしろほかの病気が考えられます。

 

パーキンソン病の症状には、主に運動症状と非運動症状の2つがあります

 

運動症状

 

  1. 仮面様顔貌、脂顔(てかてか顔)

  2. 話し方は、小声で、早口になります。すくみ言語といって、話し始めの言葉が全く出ないということもあります。

    ③ 姿勢は前かがみで、片方の肩が下がって斜めに傾くことが多いです。寝ると、空間の認識がうまくいかないのか、斜めに寝る方が多く見られます。

 

④歩行は、小刻みで、途中で止まれないので突進歩行になります。すくみ足を伴い、一歩目が出ません。むしろ、何か障害物があったほうが歩きやすいことがあります(逆説歩行)。床に白線が引いてある方が歩きやすい、階段の昇りは得意、などもその表れです。

 

⑤症状は片側から始まり、右と左で強さが違うのが特徴です。

 

非運動症状

 

最近、非運動症状が非常に注目されています。非運動症状がコントロール出来なくて、運動症状と同じくらい生活に支障をきたすことがあります。。

 

  1. 自律神経症状

    名前の通り、自律的に働いてくれる神経です。私達が寝ている時でも、常に身体を調整してくれています。腸や心臓を動かす、気管を広げたり閉じたり、発汗を調節したり、いろいろなことをしてくれます。パーキンソン病の患者さんでは、かなりの方で自律神経が障害されています。

 

便秘は100%近く起こります。

 

起立性低血圧、すなわち立ちくらみも非常に強い方があります。

 

発汗障害に関して、皆さんにお伺いすると、「汗は多いです」と言われます。それは、顔面とか上半身に非常に汗をかかれるからです。けれど、足の方を触っていただくと、さらさらしている。下半身から汗が出ないので、調整機能が働いて、出るところから汗をたくさん出しているのです。

 

褥瘡(じょくそう)、すなわち床ずれはなぜできるのでしょう?皮膚の下の組織や筋肉の血管にも自律神経があって、血管を閉じたり開いたりしています。寝ていると、重みでその血管が圧迫されて血流が悪くなり、組織が死んでしまうため褥瘡が出来るのです。何も、お尻がすれてできる訳ではありません。パーキンソン病の方は、重みに耐えて血管を閉じないように開く働きが弱いので、褥瘡が出来やすいのです。ONの時に歩き回られる方でも、褥瘡を作っておられる方を何人も見ました。

 

  1. 感覚の障害

 

1) 痛み、しびれ、2) 嗅覚低下、3) 味覚障害、4) レストレスレッグス症候群(むずむず足症候群)などがあります。

 

 OFFの時に、痛みやしびれが出たり、強くなったりすることがあります。パーキンソン病では、臭いが分からない方が結構おられます。

 

③精神症状

 

 精神症状に関しては鬱(うつ)ですね。いろんな事が気になったり、気が滅入るというような症状が、4割ぐらいの患者さんにあると言われています。

 

特徴的なのは、アパシー (意欲低下)、アンヘドニア (喜びの低下)です。何かやってみようという意欲がなかなか起きない。いろんな事が出来たり、症状が少し良くなっても、あまりそれを嬉しいと思わなくなります。

 

また、パーキンソン病の患者さんは認知症を合併しやすく、他の精神症状として、幻覚・妄想、ドパミン調節障害などがあります

 

  1. 睡眠障害

 

不眠には、寝付きが悪い、一旦寝るけれども途中で目が覚める、朝早く目が覚めてしまう、という障害があります。鬱の方は途中で目が覚める場合が比較的多いようです。また、朝早く目が覚めると言われています。

 

 不眠の原因には次のようなものがあります。

 

・パーキンソン病の運動症状で、睡眠中に動けなくなっていて、寝返りができないため。

 

・ジスキネジアが強いため。

 

OFFで痛みが強くて目が覚めてしまうため。

 

高齢の方で頻尿のため起きてしまうため。

 

睡眠時の幻覚で目が覚めるためetc

 

 逆に日中の眠気が起こることもあります。薬で眠くなることもあります。

 

 また、眠気を感じずに眠ってしまう

 

があります。

 

これを突発的睡眠といいますが、交通事故などを起こす恐れがあるので

 

注意が必要です。 

 

レム睡眠行動異常症(RBD)

 

 睡眠にはレム睡眠とノンレム睡眠があります。

 

 眠っている赤ちゃんを見ていると、目がキョロキョロと動いているのがわかります。それがレム睡眠で、そういう場合には必ず夢を見ています。脳は活発に動いているけれども身体は休んでいます。そういう時に、普通は筋肉がだらんとしています。ところが、レム期になっても、筋肉が緩まない方があります。そうすると、夢の通りに動いてしまいます。

 

例えば、熊と格闘している夢を見ている人は、横に寝ている奥さんをなぐってケガをさせたり、壁を蹴って自分がケガをしてしまう。そんなことがあって、非常に危ないのです。

 

この症状に対しては、クロナゼパム という、てんかんに使う薬を処方します。RBDがあると、後になってパーキンソン病が起こる確率が高いと言われています。

 

 

 

 

 


パーキンソン病の診断

 

 

一般的には、臨床症状と、薬・・・L-ドパ(レボドパ)を飲んでもらって、効くかどうかで判定します。

 

診断の参考にするのに、MIBGシンチグラフィーとか最近ではDATスキャンがあります。まずMRIを撮りますが、MRIの画像で何もないということを観るために撮ります。他のパーキンソン症候群だと変化が起こることがあるのですが、パーキンソン病だとそういうことがないというのを見るために撮ります。

 

MRIを撮って何もなくてよかった、すなわち病気がなかった、と勘違いされる方があります。そうではなくて、パーキンソン症候群を起こす病気はなかったということなのです。

 

パーキンソン病の発症早期には異常が出ないことがあります。異常がなかったがパーキンソン病の可能性が否定できない場合は、しばらく期間を置いてからもう一度検査をすることがあります。

 

また、元々心臓の病気のための検査ですから、心臓に病気がないことを確認しておかないと検査の意味がなくなってしまいます。

 

 3.DATスキャン

 

脳内の黒質から線条体に向かう神経経路(ドパミン神経)に存在するドパミントランスポーターを画像化し、ドパミン神経の変性・脱落の程度を評価する検査です。線条体へ行くドパミン神経が落ちているかどうかが分かります。

 

ドパミンが放出されて受容体で受けますが、ドパミンがここで受容体にくっつかない場合は分解されます。それをリサイクルするため吸い上げるポンプの役割を行うのが、ドパミントランスポーターです。これが低下するということは、この神経自体が減っているということを

表します。

 

パーキンソン病パーキンソン病に似た症状が現れるパーキンソン症候群を鑑別するための検査ではないので、MIBG心筋シンチグラフィーや他の検査を複合して診断します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

病理・病因・病態

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


病理・病態

 

①パーキンソン病では黒質の神経細胞が減っていって、そこから線条体へ行く神経終末から放出されるドパミンが減少しています。

 

  1. レビー小体の出現

 

神経細胞の中にレビー小体が現れます。中脳というところに黒質があって、脳を水平に切っている図では、黒質のすぐ裏に線条体があります。パーキンソン病の方の黒質では、神経メラニンの色が抜けるので白く見えます。レビー小体は、脳を薄く切って顕微鏡で見ると、回りにハローという輪がある小体です。レビー小体の構成成分の一つがα-シヌクレインという物質です。α-シヌクレインンは、パーキンソン病では神経細胞の中にたまります。(因みに、多系統萎縮症ではグリア細胞にたまります。)

 

病因・病態

 

  1. 孤発性

 

パーキンソン病は、ほとんどが遺伝性のない孤発性のものです。環境要因(日々食べているもの、吸っているもの)、様々な酸化的ストレス、あるいは活性酸素などが悪さをするのではないかと考えられています。α-シヌクレインが集まって固まるとレビー小体になるのですが、それを分解するのに何か異常があるのだとか、いろいろな事が言われています。しかし、これだ!というような、明らかな原因はまだ分かっていません。

 

  1. 家族性

 

パーキンソン病の510%くらいは血縁者に発症者があり、家族性に起こってきます。家族性パーキンソン病にはいくつもの種類があることがわかってきています。

 

遺伝子が一か所異常で起きる病気がPARK1PARK 21で、今22番目が申請されています。優性遺伝のものにPARK1などがあり、劣性遺伝のものに順天堂大学などが遺伝子を見つけたPARK2とかがあり、日本ではこの方面の研究が進んでいます。
 一方、一つの遺伝子異常ではなく、いくつかの遺伝子異常、または体質を決めるような遺伝子多型と環境などの他の因子との組み合わせによって発症することも考えられてきています。後で述べるGBA変異もその一つです。

 

Braak仮説

 

 

 

 

 

 

 

 

 

環境要因に何か関係があると言われている説の一つがBraak(ブラーク、人名)仮説です。病変の起こり方を脳で調べてみると、色の濃い所は病変が強いところです。

 

 

 

 

 

 

 

 

色の薄いところは病変が弱いところです。病変の強いところから病気が始まり、他の部位に広がっていくのではないか。病気は2カ所から始まり、2つのルートを通って広がるのではないかと考えられました。一つは延髄で、もう一つは嗅球という臭いを感じる神経です。臭いが分かりにくいと言いましが、関係あるかもしれません。実は延髄より早くに病変が起こるのが腸管の自律神経で、腸管の神経の通り道が延髄なのです。腸管や嗅球は外界と接している部分で、食物や臭い物質が入ってくる場所です。環境要因がパーキンソン病を引き起こすのではないか、と推測しています。どんな物が悪いのかというのはまだ分かっていません。

 

GBAとパーキンソン病

 

  1. ゴーシェ病

 

 ユダヤ人に多くてGBA(グルコセレグロシダーゼ) 遺伝子のホモ変異で起こります。遺伝子が、両親とも異常があると、こういう病気が起こる。肝臓や脾臓が腫れたり、神経に症状を起こしたりします。

 

  1. GBAヘテロ変異

 

 ゴーシェ病は日本人で見ることはないと我々は思っていましたが、最近日本でも注目されています。それはゴーシェ病の遺伝性のある家系の中にパーキンソン病の方が多いということが分ってきたからです。

 

遺伝子が両親とも異常だとゴーシュ病になるのですが、ヘテロ、すなわち父親あるいは母親のいずれか片側に遺伝子の異常があると、パーキンソン病になるリスクが56倍になります。

 

 日本人でもGBA変異があるとパーキンソン病になるリスクが高いことや、GBA変異で起こるパーキンソン病の方は比較的若年発症で認知症を伴うことが多いことなどが、宇多野病院の大江田先生の研究でも分かってきました。これは血液で調べることが出来ます。

 

パーキンソン病の治療法

 

治療には薬物療法、脳深部刺激療法(DBS)、リハビリテーションがあります。

 

1薬物療法

 

メインはL-ドパとアゴニストです。薬剤名は商品名

 

  1. L-ドパ:マドパー、メネシット、ネオドパストン、ドパコールなど

  2. アゴニスト:ビ・シフロール、レキップ、ペルマックスなど

  3. モノアミン酸化酵素B(MAO-B)阻害薬:エフピー(FP

  4. カテコール-O-メチル基転移酵素(COMT、コムト)阻害薬:コムタン

  5. ゾニサミド:トレリーフ

  6. アデノシンA2A(エーツーエー)受容体拮抗薬:ノウリアスト

  7. アマンタジン(NMDA受容体拮抗薬):シンメトレル

  8. 抗コリン薬:アーテン

  9. ドロキシドパ:ドプス

    神経伝達物質(ドパミン)が、減っているので補います。ドパミンというのは腸から吸収されません。L-ドパは脳に入って初めてドパミンに変化して、作用を及ぼします。L-ドパは効きが鋭くてよく効き、副作用が少ない。ただ、効く時間が短い;病気の初期の方は一日23回でも一日中効くのですが、だんだん効いている時と効いていない時が出てきたりします。

    アゴニストはマイルドに効き、運動合併症が生じにくい、といった特徴があります。

    そのため使い分けをします。一般に、65歳以下の方だとアゴニストで治療を始めます。70歳以上の方、認知症がある方、仕事を続けるためとにかく症状をとらないといけないという方にはL-ドパを使います。6570歳の方は、それぞれの症状に応じて使い分けます。症状が進んでいくと両方を使うことになります。

 

ELLDOPA研究のデータです。L-ドパ50㎎、300㎎、600mgを飲んでいる人と、飲んでいない人の症状の変化を42週間調べると、薬を飲まない人は症状が悪くなっています。飲んでいる人は、量が多いほど良くなっている。ここで服薬をピタッと止めると、薬の直接の効果はなくなっているはずですので、症状は同じ程度になると予想されます。しかし、薬を600mg飲んだ人が最も症状が軽く済んでいる、という結果でした。L-ドパで治療するというのは、病気に対していい影響を与えているということの証しです。

 

患者さんは、初期には薬はあとまでとっておく方がよいと思われて、症状が強いのに我慢して飲まないとか、少ない量や中途半端な量で飲んでいる方があるのですが、それはあまり得策ではありません。症状はきっちり取るぐらいの十分な量を飲むことが大事です!

 

MAO-B(モノアミン酸化酵素B)阻害薬とCOMT(カテコール0メチルトランスフェラーゼ)阻害薬は、L-ドパの分解を抑える薬で、効き目を長くします。COMTは脳に入る前に、MAO-Bは脳に入ってから、L—ドパの分解を抑えます。COMT阻害薬には、コムタンとL-ドパとの合剤であるスタレボとがあります。

 

他の薬剤の特徴を簡単にお話します。〇トレリーフ:ジスキネジアや幻覚が起こりにくいのですが、眠気が出る場合があります。〇アデノシンA2A(エーツーエー)受容体拮抗薬:ドパミン系ではないところに働いて症状を良くします。これも、ジスキネジアや幻覚が起こりにくい薬剤です。〇アマンタジン:ジスキネジアを抑える働きがあります。〇抗コリン薬:高齢の方は認知機能を落とす確率が高く、若い方でもボーッとして物忘れをするので、飲めない方があります。この薬は高齢者には要注意です。〇ドロキシロパ:脳の中でノルアドレナリンに変わるので、すくみ足とか起立性低血圧に使います。

 

2.脳深部刺激療法(DBS)

 

DBSは細い電極を脳内に植え込む手術です。胸にペースメーカーのような電池、発信機をいれておきます。MRIとか強い磁石のあるような所、リハビリの電気療法などの設置場所は禁忌です(最近ではMRIも撮れるものが出ています)。

 

IHクッキング、体脂肪計、万引き防止装置などは、弱い電流が流れるので、ペースメーカー程ではありませんが影響はあります。

 

3.リハビリテーション

 

パーキンソン病に特化したリハビリがあって、宇多野病院でもやっています。LSVTBIG(エルエスヴイティー-ビッグ)は身体を大きく動かすこと、LSVTLOUD(エルエスヴイティー-ラウド)というのは声を大きく出すことを意味します。パーキンソン病の方は、小さい動きを正常な動きだと脳が判断してしまっているのですが、大きく見える動きが正常だということを脳に教えていくリハビリです。かなり息が切れるくらいに大きな運動です。宇多野では入院して4週間コースでやっています。宿題があって、病棟で自主トレをやっておられます。

 

進行期の問題点

 

 

 

①症状の日内(にちない)変動

1)運動症状:ウェアリング・オフ、ON-OFF(オン-オフ)現象

 

2)非運動症状

 

〇感覚障害:しびれ、痛み     〇精神症状:うつ、不安、パニック症状

 

〇自律神経症状:発汗、頻脈、血圧上昇

 

日内変動は運動症状が一番目立ちます。次の薬を飲む頃にだんだん切れてきたり、急に切れたりします。トイレに行くときは小走りに行って、終わって立ち上がろうとしたら立ち上がれないとか、急に起こる場合があります。

 

非運動症状にも日内変動があります。薬が切れてくると、しびれや痛みが強くなったり、不安になったり、パニックを起こすことがあります。汗をだらだらかいて、脈が速くなり、血圧も上がることがあります。これを非運動症状の日内変動、OFFと認識する必要があります。この場合は、ONの状態を増やすように治療します。

 

②不随意運動

 

1)ジスキネジア:ピーク時、二相性

 

2)ジストニア

 

ジスキネジアは、一般的には薬が効きすぎるということです。(二相性)

 

③すくみ足

 

すくみ足の対処法

 

 床に線を引いてそれを超えていくとよい場合があります。自宅でトイレに行くまでの廊下や、いつも座る食卓の椅子のところまで、テープを貼っておくというのも一つの方法で目印(キュー)になります。耳から入るキューとして、簡単な号令をかける(「イッチ、ニィ」)とか、少しアップテンポの音楽に合わせると歩きやすくなることがあります。学生の時、講義でからこんな話を聞きました。

 

パチンコ屋で昔は軍艦マーチが鳴っていました。小股で歩いて来て、パチンコ屋の前だけさっさと歩けて、そこを通り過ぎると、また歩けなくなる。音が一定のリズムで耳から入ってきて、それで自分のリズムを作れたわけです。

 

 パーキンソン病のための音楽の入ったCDも出ています。半歩後ろに引いた足を踏み出す、カニのような横歩き、スケートのようにハの字に歩く、手を後ろに組むなど、ご自身にあう方法をやっていただければよいと思います。

 

服用法など

 

 薬が急に切れた時には、アポカインという注射があります。これはアポモルヒフィン塩酸塩水和物というアゴニストの一種なのですが、早く効くので、30分、15分、それくらいにピークが来ます。急に動けなくなる場合にはこういうレスキュー療法を使い、他は飲み薬だけで行くというやり方もあります。

 

ウェアリングオフ(次の薬を飲むまでに薬が切れてOFFになること)が起こってきたら、L-ドパを3回だけでなく、4回、5回と飲むとよいことがあります。そしてアゴニストを加える、阻害薬とかトレリーフを一緒に使う。それでもだめな場合はDBS手術療法を行うことが言われています。ジスキネジアが強くなってきた時は、ジスキネジアを起こしやすい薬を順番に止めていくとか、アゴニストを加えるとか、アマンタジンを加えるとか、L-ドパを何回にも分けて飲むとかいうやり方があります。ジストニアは薬が切れた時に多いのですが、一番多いのは朝です。寝る前に長く効くアゴニストを使う、あるいは朝に寝床でL-ドパを飲むとよい場合があります。

 

L-ドパ製剤の吸収の問題

 

便秘のときは吸収が遅れるので、下剤を使っても便通を整えておきましょう。

 

錠剤で飲むと溶けるのに時間がかかるので、ぬるま湯に溶かしておいて懸濁液にすると、早くに吸収されてよいことがあります。早く切れる場合もあります。

 

服薬上の注意点

 

 ①一日の最大量を守る。

 

②原則として食後に服用する。

 

吐き気があるときは食直後または食事中に飲みます。薬の効きが悪い時は食前などの空腹時に飲みます。

 

③必ず水で服用する。

 

牛乳など、タンパク質の含まれているものでは飲まないようにして下さい。薬の吸収のされ方が変わり、効果に影響します。

 

  ④絶対に服薬を中断しない!

 

→悪性症候群の危険があります。

 

悪性症候群

 

風邪の時でも、絶対に薬を飲むのを止めないようにして下さい。なぜなら悪性症候群が起こる可能性があるからです。高熱が出て、身体がガチガチになって、意識が無くなって、筋肉に含まれているCPK(あるいはCK)の値が何千、何万になったりする。これは命にかかわります。夏とか、冬の暖房を強くかけていると起こったりします。

 

治療薬の副作用

 

ドパミンアゴニスト

 

1)麦角系(カバサール、ペルマックス、パーロデルなど):心臓弁膜症、胸膜炎、後腹膜線維症

 

2)非麦角系(ビ・シフロール、レキップ、ミラペックスなど):突発的睡眠

 

両者共通:腰曲がり、首下がり 

 

アゴニストは、麦角系と非麦角系に分かれていますが、今はまず非麦角系を使うことになっています。ビ・シフロールとかレキップです。カバサールやペルマックスでは、弁膜症が起こりやすいからです。

 

トピックス

 

 

 

 

 

パーキンソン病の早期症状とは?

 

便秘、鬱、嗅覚障害、レム睡眠行動異常症(RBD)

 

パーキンソン病も早期診断・早期治療が必要で、最初の症状は何かということで、これらが注目されている。

 

ドパミン調節障害

 

 パーキンソン病治療薬の過剰使用で生じます。

 

  1. 衝動制御障害:衝動を抑えきれない。①病的賭博:朝から晩までパチンコばっかりするなど。②性欲が亢進する。③L-ドパ渇望/依存/乱用。④買いあさり。⑤むちゃ食い。

 

2、パンディング(反復常同行動)

 

意味のないことを繰り返すことです。引き出しから服を出してきてはまたしまう。男性だと、ラジオとかメカを分解しては、また組み立てる。治療は過剰な服薬を止める、服薬管理をするということですが、なかなか難しい場合があります。

 

治験やこれからの治療

 

いろんな薬の治験がされていますが、ひとつはL-ドパの徐放剤です。DUO-DOPA(デユオドパ)については後で話します。MAO-B阻害薬の新しいものが治験されています。

 

 遺伝子治療というのは脳に入るウイルスがあって、それにドパミンを合成する酵素や神経栄養因子というのを入れておいて脳の神経細胞に届ける方法です。

 

ウェアリングオフとかジスキネジア解決する一つの方法に、DUO-DOPAというものがあります。胃瘻(いろう)を作って十二指腸まで管を入れて、ここにL-ドパのゲル状のものを持続的に流します。装置を着けたまま普段通りに動けます。L-ドパの徐放剤でも血中濃度にはまだ波がありますが、L-ドパを十二指腸に持続的に入れると血中濃度の変動をものすごく抑えられ、運動合併症が減ると言われています。

 

レビー小体型認知症(DLB)

 

最初パーキンソン病といわれたのにある時から、レビー小体型認知症(DLB)だと言われて、「私は違う病気になったのですか」という質問をよく受けるのですが、一連の病気なのです。動きが悪いのが目立つ時はパーキンソン病と診断され、精神症状、認知症、幻覚・妄想がひどくなってくるとDLBと呼ばれるのです。こういう方は、パーキンソン病の薬を少し増やすだけでも、幻覚・妄想が出やすいので、治療がやりにくいところがあります。DLBはアルツハイマー型認知症の次に多い認知症です。

 

パーキンソン病告知における注意

 

パーキンソン病と診断された時のショックは大きいと思います。どうして自分だけこんな病気になるのか、治らず寝たきりになるのか、いろんな本を見てみると、治らないと書いてある。それについては、まれな病気ではないということです。

 

治らない、というのが強調されていますが、例えば高血圧とか糖尿病も治らないですね。薬を飲まなくていい、治療を全くしなくていいということにはなりません。しかし、治療で血圧が下がったり、血糖値が下がったりすることで、症状は“治っている”とも言えます。パーキンソン病も同じで、治療するといい状態が保てる、すなわち症状は“治っている”と言えるかと思います。

 

介護上の注意

 

①転倒に注意して下さい。

 

②同時に二つのことをしないようにして下さい。 

 

 例えば、話しながら歩くというのは簡単そうに見えますが、非常に難しいことなのです。話すなら立ち止まる、歩くなら話さない。両方やろうとすると動きが悪くなって転倒しやすくなります。考え事をしながら歩くのも、止めた方がよいでしょう。

 

嚥下障害への対応は、飲み込みが悪くなれば、とろみをつけたり、必要に応じて胃瘻を造る。胃瘻から薬をきっちり入れておくと、食事を口から食べられるようになることもあります。これも選択肢の一つです。

 

④褥瘡ができやすいので、寝ている時間が多い方は体の向きをしっかり変えてあげましょう。

 

⑤ご家族は何でもしてあげるのではなくて、できることは自分でしてもらって下さい。その時には、焦らずマイペースでしてもらうことが大切です。できないことは介助してあげる。見極めは難しいかと思いますが、そのあたりを踏まえて介助してあげればいいかと思います。

以上で、私の話は終わらせていただきます。ご清聴ありがとうございま

 

質疑応答

 

 

【質問1: 薬は寝る前に飲み、朝は飲まずに6時頃から毎日30分ほど歩いている。歩くと足がだるくしんどくなり、帰宅後横になる。それでも歩いた方がいいですか?どの時間でもそうで、足を引きずりながら家事もやっている。少し遠くまで歩くと、歩きにくくなります。

 

(先生1): 薬が十分効いているかということがあります。散歩の時間は30分を20分にするとかして、しんどいとか痛みが出る前にやめた方がいいかと思います。辛抱してまで歩く必要はないと思います。また、起きてすぐに薬を飲んで、少し症状がとれてから散歩に出かけられるのがよいかと思います。

 

 

 

【質問2】: 家内のことです。発症して14年。L-ドパを服用して12年経過。現在、アゴニストがもうひとつ効かなくて、L-ドパを増量するようになりました。どのくらい増量が可能なのか(最近13.5錠を4錠にした。)

 

(先生2: 14年経過されている患者さんの薬の量としてはそれほど多くはないと思います。同じ量を飲んでも、腸からの吸収とか、脳に入る具合は人それぞれなので何mgまでということはあまりありません。効能書きには6(600mg)までと書いてありますが、副作用がなければそれを越えて飲んでおられる方もおられます。主治医の先生は、症状に応

 

じてゆっくり増やして反応を見ておられるのだと思います。よく相談されると良いと思います。

 

【質問3】介助している家族が横にいて、号令をかけたり、手を添える時はいいのですが、常にいる状況ではない。1人のとき、本人は気をつけていてもすくみ足とか第一歩が出にくい。転倒を防止する薬はないですか。(転倒しやすい状況)

 

先生3):

 

 なかなか難しいご質問です。歩きにくい時は立ち止まる、座るなどしていただくのがよいのですが、間に合わないこともあります。転倒そのものを防止する薬は、今のところありません。少しでもONの状態を増やすように、薬の調整をしてもらって下さい。

 

 

 

【質問4】:自宅においてもリハビリを継続させるよい方法はないですか。

 

(先生4:日常生活でできるだけ動いて、普段の生活を続けていくのが一番大きなリハビリになると思います。一日に時間を決めて歩く、姿勢が前かがみなるので遠くや鏡を見る、お尻と後頭部を壁に押し付ける、などがあります。うつ伏せになると胸や背中が伸びます。ただ、身体が曲がっている方は、下にクッションを置いて少し丸くなった感じで少し伸ばすのがよいでしょう。姿勢に気をつけるのと普段の生活の中で動いてもらうのがいいですね。

 

【質問5】: パーキンソン病とそれ以外の神経内科の病気を比べた時、明確に違う点を教えて欲しい。

 

先生5パーキンソン病は、動きが鈍くなる、身体が固くなる、ふるえる、倒れやすくなる、といった症状が出ます。このような症状を引き起こす病気のうち、黒質から線条体へいく神経が障害され、しかもレビー小体ができる病気だけをパーキンソン病といいます。講演で説明した薬が効くということです。一方、パーキンソン症候群は、パーキンソン病に症状は似ていますが、レビー小体ができない、MRIで特徴的な所見が出る、薬が効かない、といった特徴があります。

 

 筋力が入りにくくなり、動きにくくなる病気もあります。例えば、脳卒中で片側に麻痺が起こる場合は、脳に原因があります。筋ジストロフィーは筋肉そのものがやられる病気です。

 

 

 

【質問6】:新聞の記事に京大のiPS細胞の高橋教授の話で、ドパミン神経を移植する際に女性ホルモンを投与しておくと、シナプスの形成が促進されるとありました。こういうことも含めてiPS細胞の実用化はかなり近いと見てよいですか。

 

(先生6):オスのラットに女性ホルモンを投与すると、インテグリンという細胞と細胞をくっつける接着因子が誘導されるので、神経細胞の終末と受容体の結合が出来やすくなるのではないか、と言われています。神経の移植は難しい。と言いますのは、肝臓だと肝細胞を移植すると肝細胞は増えた分だけ働きをします。神経の場合は、神経細胞1個あってもダメで、他の神経とつながっていかないといけないのです。できるだけ、神経がネットワークを作りやすくする方法の一つだと思ます。          

 

実際のiPSの実用化は、高橋先生にお会いした時いつからですかとお聞きするんですが、なかなかいつからとは明言されません。でもかなり近いところまできているようです。

 

 

 

【質問7】:ビールのプリン体がパーキンソン病の進行を遅らせると聞きました、が事実でしょうか。

 

(先生7):調べて見ると、尿酸が高くなるような食事が影響するのではないかという説のようです。パーキンソン病の進行を遅らせるとしても、痛風になったり、いろいろな血管病のリスクがあるといわれるので、ビールをお勧めするのはどうかなと思います。

 

 

 

【質問8】:ニュープロパッチを貼ると太ももに痛みが出てあまり効果がないように思う。主治医に言って、早くやめてもらう方がよいでしょうか。

 

(先生8):薬の効能書きには、骨格筋の痛みについて書いてはあります。薬を貼ることによって起きた痛みなのか、薬が十分に効いていなくてまだONになっていないので痛みがあるか、ということがあります。主治医の先生に事実を言っていただいて、相談してください。ニュープロパッチの量を増減されるのか、他の薬を増やされるかは、状況に応じてだと思います。

 

(編集 朝加)

 

 

 

 

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