パーキンソン病におけるリハビリの意義    運動療法について

理学療法士  瀬尾 和弥 先生

今日はパーキンソン病のリハビリの意義ということで、運動療法についてお話しします。

 パーキンソン病の治療は、大きく、薬物療法、手術療法、リハビリテーションに分けられます。パーキンソン病の治療の基本は薬物療法ですが、リハビリテーションを併用して行うことで、症状が軽減したり、運動機能が維持できることがわかってきています。

 リハビリテーションには実際に運動を行って運動機能の維持や向上をはかる運動療法や、日常生活の動作をできるだけ自分で行えるよう工夫するなどの方法があります。その中で、まず、運動療法についてお話しさせていただきます。

 パーキンソン病の四大徴候と言われる症状ですが、手や足などがふるえる安静時振戦、手足の筋肉がこわばって動きが悪くなる固縮、体の動きが遅くなるあるいは動かなくなる無動・寡動、それに、バランスを崩したときに姿勢を立て直せなくなってしまい、倒れやすくなってしまう姿勢反射障害、などの症状があります。

 こうした症状によって、日常生活では、身体が思うように動かせない、服の脱ぎ着がしづらい、食事がしにくい、洗面や歯磨きがしにくい、体を洗いにくい、寝返りがしにくい、起き上がりにくい、なかなか立ち上がれない、歩きにくい、転倒しやすい、などさまざまな症状が出てきます。

 その結果、自分から何かをしなくなる、あるいは、ご家族がすぐに手を出してしまう、この「すぐに」というのがポイントですが、少し待ってあげると出来るのだが、手伝ったほうが早いということが増えてしまう。外出の機会が少なくなる、家にこもりがちになる、気持ちが内むきになるといったことで活動量が低下してしまう。

 このようにパーキンソン病の患者さんは活動量が低下し、筋肉を使わないからどんどん弱くなるし、持久力も低下します。また、パーキンソン病に特徴的な前傾・前屈姿勢のために、動かせる範囲が狭くなってしまう、関節を動かさないことや関節拘縮などがおこります。そのためにまた、活動量が低下することにつながってしまい、悪循環に陥ってしまいます。

 パーキンソン病の機能障害は、病気により直接起こる症状として、先ほどの、安静時振戦や固縮、無動・寡動それに姿勢反射障害など運動症状と、精神障害や自律神経系の症状などの、非運動症状があります。それと、二次的に起こる障害として、活動が低下するために筋力が落ちてしまったり、関節が固まってしまう。それから、バランスが悪くて転倒してしまう、それによって骨折してしまうなどの障害があります。この二次的に起こる障害を予防するために、身体を動きやすい状態に保つ。そのためにストレッチや筋肉トレーニングを行ったり、日常生活動作を工夫することによって、日常生活の活動性を高める、日常生活を高い状態で維持することが必要になります。

 では、動きやすい身体を保つためには具体的に何をすればいいのか、それがパーキンソン病体操です。これにはいろんな体操がありますが、今日お配りした体操は比較的安全に、身体を動かしやすい、座ってできる体操を中心にしてあります。一人ではなかなか動かせないところでも効果的に動かせるようにする、タオルを使った体操も紹介しています。タオルを使ったストレッチのような体操も入っています。寝て行う筋力トレーニング、四つ這いになってするトレーニング、これはバランスをよくする効果があります。

 病院に入院中にリハビリを実施した患者さんの運動症状の変化を調べてみました。リハビリ前の運動症状が青色のグラフで、リハビリ後の症状が赤色のグラフです。振戦や固縮、無動・寡動を示しているのですが、リハビリ後のほうが症状が改善しているのがわかります。とくに、動作緩慢の症状の改善が大きいという結果でした。これにより、リハビリによって病気そのものの障害も軽減しているということがわかりました。

 (図を示して)この方は、薬の効き方が悪いために、薬の調整のために入院された方です。薬が効いていないときの歩き方がこれです(小幅で少しずつゆっくりとしか歩けない像を示している)。それが薬の調整が終わると、かなり改善しています(次の像を示す)。これでずいぶん改善されたのですが、それからリハビリをしてさらに歩行能力が改善されて、退院されました。

 このようにリハビリを行うことで、症状が軽減したり、歩行能力も改善するということがわかっています。

 最後に、運動療法の注意点ですが、パーキンソンの方は筋肉がこわばったり、スムーズに動けないために疲れやすいのです。だから、薬の効果があって動きやすい時間帯に行ってください。あとは無理をしないで疲れない程度に行ってください。この冊子の中にはたくさんの運動が紹介されていますが、全部するということでなく、自分のできるものから出来る範囲で、やってみて自分にとって気分がいいなと思えるような体操を見つけてもらって、それ一つでもいいから続けてください。

 それと、運動は、一つ一つ丁寧に行ってください。たくさんやろうとするとどうしても慌てますので、運動の範囲が小さくなりますので、一つ一つ丁寧に行ってください。目標は一日に、10分から20分の運動を2,3回行ってください。これはあくまで目標ですから、できなければ1回でもいいです。毎日続けることが重要だと思います。

 強い痛みを伴うような運動は避けてください。強い痛みを伴うというのは、運動の仕方が間違っている可能性もあると思います。また、痛みに耐えて行うのがいいという訳ではありません。運動を楽しんでください。楽しければ続けていけると思います。

 まとめです。パーキンソン病には、病気により直接起こる障害と二次的に起こる障害があります。運動療法によって二次的に起こる障害を予防することが重要です。ただ、運動療法をすることによって、病気よって直接起こる障害をも軽減することが期待できます。

以上です。

パーキンソン病におけるリハビリの意義    日常生活動作について

作業療法士 梅本 明 先生

 先ほどの瀬尾の話は、運動療法についてでしたが、私は日ごろの生活の中でどのように工夫すれば動きやすくなるかということを中心にお話しします。

 どんなに頑張ってリハビリをしても筋力やバランス反応の改善には限界があるかなと思っています。ですが、現状の能力の中で、日々日常生活を過ごしていかなければなりません。著しい身体機能の改善が得られなくても、日常生活の上で、ちょっとした工夫や、新たな動作様式を学び直すことで、生活しやすくなるということがあります。

 そこで、今日は、日常生活上の工夫点を紹介させていただいて、お家に帰られてから是非試していただきたいと思っています。

 

 まず一つ目に、日常動作をしやすくする七つのポイント・基礎編というのをお話しします。二つ目にその基礎編を生かして、それを応用した形で、日常生活の中でどうやって行えばいいかということをお話しします。

 

 日常生活動作をしやすくする七つのポイントです。

(1)出来るだけ単純で大きな動きを意識しましょう。パーキンソン病の症状の一つに筋固縮と言って筋肉がかたくなるという症状があります。これは、曲げる筋肉と伸ばす筋肉が同時に力が入ってしまうという状態です。通常、曲げる筋肉と伸ばす筋肉が、どちらか一方が働き、他方が緩むということになります。これが、パーキンソンの場合、両方に同時に力が入って動きにくくなるのです。こういう場合、曲げるなら曲げる、もしくは伸ばすなら伸ばす、というふうに一方向に向かって大きく動かすということを意識して動かしてください。

(2)一つ一つの動作を確実に行いましょう。二つ以上の動作を、あるいは課題を同時に行っていくと非常に動きが難しくなるということがあります。たとえば、布団をめくりながら同時に起き上がる動きになりますが、とても難しく感じることがあります。布団をめくるならめくった後に起きるようにしてください。布団をめくるという動作と起き上がるという動作を順番に一つ一つ行うことが重要です。

(3)すくみ足が起こりやすい場合は、場所を広くとって、目印や音を上手に使いましょう。どうしても動作の動き出しがうまくいかなかったり、狭く暗い場所では足がすくんだりということがあります。なるべく明るい場所で動くような配慮や、目印になるような線を引いてそれをまたぐというような工夫が良いかと思います。また、ご家族の方に一二一二と声をかけてもらったり、手拍子をしてもらうといったことが効果的です。すくみ足で足が前に出ない時だけではなくて、立ち上がる時や方向転換をする際にも非常に有効です。

(4)気分がリラックスする環境を整えましょう。危ない、もしくは、出来ないと感じたり、焦ったり、やりたくないといった精神的なストレスを感じると非常に動きにくくなるということがあります。安心して動ける環境を整えて、マイペースに動くということが大事になります。気持ちの持ちようでも、ずいぶんと動きが変わるということがあります。

(5)早め早めに動作方法や環境を変更して、早いうちからなるべくその動作に慣れていくということが大事になります。歳を重ねて、症状が少しずつ進行していきますと、新しい動作を覚えるということが難しくなります。手すりの取り付けや、シャワーチェアーを使って湯ぶねのまたぎ方などをなるべく早いうちから慣れておくということも大事です。

(6)注意力を高めて、動作を意識して行いましょう。何気なくボヤーと動作を行ってしまうと動きの質や注意機能の低下につながることがあるので、歩くなら歩く、立つなら立つ、食べるなら食べるというふうにその動作に対して注意を高め、集中することで動きのパフォーマンスの向上が期待できると思います。

(7)首、肩のまわりを動かしましょう。パーキンソンの方は、疾患の特性から、猫背あるいは腰曲がりといった症状が出てくる人が多いです。頭の重みが後頚部、頭の後ろから肩にかけて、こりを併発して、腕の動かしにくさやだるさや痛みなど、日常生活に支障をきたしますので肩のまわりの運動が大事です。たとえば、肩をすくめて下ろす、あるいは、肩をまわす運動になります。背中に三角の肩甲骨という骨がありますが、それをしっかり動かす必要があります。姿勢が悪いと肩も上がりにくくなります。

 

 では、七つの基礎編を生かした応用編、実際に生活でどう使っていくかということについてお話しします。

 日常生活動作、これは大きく分けて五項目あります。

ご飯を食べる。 トイレに行く。 着替える。整容(身だしなみ)、歯を磨いたり、顔を洗ったり、女性ならお化粧をする、男性なら髭をそるといったことです。風呂に入る。

食事について

まず、食事における動作では、食物を確実に口に運ぶという動作が重要です。お茶碗を持って、ご飯をつまむ、それから口元まで運ぶ。これを一つ一つ動作を区切って確実に行っていくことが大事です。コップで飲むときも、持つ、運ぶ、傾ける、という順で、分けて意識しながら行ってください。箸の持ち方に関してですが、食事中、なかなかうまくお箸でものをつかめない時がありますが、箸を一本だけ鉛筆のように持って動かすと再びつまみやすくなることがあります。また、魚をほぐすときなど、お箸でものを裂くことができない時には、二本の箸が並行で間が狭くなっていることがあるので、なるべく広くするとうまく動くことがあります。また、筋固縮の影響で手がかたくなっていることがあるので、一度休んで手をほぐしてから、また持ち直すということが有効になってきます。

食器の色も大事です。白いご飯を白い食器に入れると食べにくいという方もおられます。白いご飯だと器を赤あるいは黒にするなど、視覚的な効果でコントラストがはっきりして手が動きやすくなる、食べやすくなるという場合があります。是非試してください。

 姿勢ですが、まっすぐに座れずに前傾姿勢になっていたり、浅く座りすぎて姿勢が安定しない状態だと、食物を口に運びにくく、飲み込みが困難になります。

 テーブルはおへそよりちょっと高い位置にして、腰は浅すぎず深すぎず、足はしっかりと床に着けます。そのうえで姿勢を伸ばすということが大事です。前方にある家具とか柱を目印にして視線を上げると、姿勢がよくなる方がいらっしゃいます。また、食べているときに、姿勢が左右に崩れてくるという方もいらっしゃいます。こういう場合は、転倒予防のために肘掛け椅子を使用するといいでと思います。

 

トイレ動作について

 まず、ズボンの上げ下ろしを簡単にしましょう。お尻のふくらみに合わせてズボンの上げ下ろしをするのが難しい場合、ズボンの前側は外側から引っ張り上げる。後ろ側は内側に手を突っ込んで引っ張り上げたり下ろしたりするとうまくいくことが多いです。また、ズボンの素材に関しても、ピタッとしたものや、硬い素材のものは、上げ下ろしが非常にしにくくなります。ズボンは伸びちじみがしやすくて、腰回りにある程度の余裕のあるものを選んでいただくといいでしょう。

 トイレでは、目印が非常に効果的になります。便座に対してまっすぐに座れない時には床に足の位置を示す目印をつけると有効です。また、男性の方には、立ってするとき、姿勢が前かがみとか猫背であるとよくないので、なるべくまっすぐに立つために、目の前に目印をつけてその高さに目線を合わせるようにするとよい姿勢になります。

 方向転換などが困難なときは動きたい方に目印をつけて、それを見る、あるいは、それに手を伸ばすなどの方法で動作を簡単にしていきます。

 

着替え動作について

 上着を着るとき、脱ぐとき、手が袖口から出しにくいということがあります。脳卒中で半身が動かないという人も行うやり方ですが、動きにくい側の手(固縮が強い側)から袖を通してください。あるいは、両手を袖に通してから一気にかぶる方がやりやすい人もいます。大きめの上着を着るという素材的な点も工夫する必要があります。脱ぐ方に関しては、手を脱ぐときは、袖口からではなく肩の方から引き下ろしていく。脱ぎにくいときは、後ろ襟を持ってそれを引っ張り上げるようにして脱ぐといいと思います。

 細かい動きが難しくなると、ボタンをかけにくくなります。普通は、ボタンを穴のほうに持っていって入れようとするのですが、そうではなくて、ボタンホールの方をボタンに持っていくと行いやすくなることがあります。

 ズボンをはくときは、ズボンのすそから足先を出しにくい時があります。そういう時はズボンのすそをドーナツ状にたばねて、足首にわっかを通すようにしてはいてください。姿勢は、立ってではなくて、座った方が安全なので座って行ってください。

 靴下を履くとき、脱ぐときも立って行うのが難しくなるので、椅子やベッドに座って、安定した姿勢で行うようにしてください。はくときは、台や木片などに足を乗せ、つま先を浮かせた状態で靴下を入れます。それから足の位置を前にずらしてかかとの部分を浮かせた状態で靴下を引き上げます。脱ぐときは逆の手順で行ってください。

 

身だしなみ(整容動作)について

 歯を磨くとき、上下に連続しながらブラシを動かしていると、筋固縮の影響で動作が行いにくくなるということがあります。上から下へ、あるいは、下から上へ、一方向を意識して動かしますと、磨きやすくなります。これは上下だけでなく左右に関しても同じで、右から左へ、あるいは左から右へと、一方向に意識して動かしてください。

 髪を整えるとき、歯磨きと同様に、鏡を見ながら一方向の動きを意識してください。髭剃りに関しても、鏡を見ながら、歯磨きと同様、一方向、上から下、あるいは、下から上と意識して動かしてください。

 

入浴動作について

 これは、ここに挙げた五つの動作の中でも最も危険の伴う動作と言われています。なので、お風呂場の移動に関しては、安心感が大事になります。風呂場は、床面がぬれている、裸である、足元が暗くて見えにくいとなると、不安感を助長し、足が出にくくなるということが起こります。なので、環境面の工夫としては、手すりを付けたり、滑り止めマットを敷いていただくと良いでしょう。照明は明るくしてください。これらが、安心感を与えて、お風呂場での移動を容易にします。

 身体を洗うときですが、前は洗えるけど背中は洗いにくいという方は多いと思います。このときも、動作を単純化するということが有効になります。両手に力を入れて交互に引っ張るのではなくて、一方の手はタオルを握る、他方の手はタオルを引っ張る、つまり片方だけ引っ張り、他方は握るだけというふうに、一方向だけに動かすということを意識してください。あと、長めのタオルや輪がついたタオルも有効です。

 

 最後になりますが、今日はたくさんのご家族さんが来られています。「さっきは出来たのにどうしてできないの」とか、「怠けてるの」とか、「先生の前ではできたのに」とか、こういう思いをご家族の方はもたれるかと思いますが、時間や場所によって、ご本人には出来ることに大きな差が出てきます。これらはパーキンソン病の共通の特徴です。どんな時に動きやすいのか、ご本人さんの動作をよく見て、聞いてあげてください。緊張すると動きにくくなってしまいます。ご本人の気分や気持ちにとても左右されやすいのです。時にはご本人のペースに合わせてあげることが大事です。

 声をかけるときは、「早く、早く」とか「さあ、歩いて」というのではなく、「ゆっくりでいいよ」とか「ふとももを上げて」とか、声をかける際は具体的な内容の方が理解しやすく、比較的動きに反映されると思います。

 

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