パーキンソン病の治療法の現状
パーキンソン病とは中脳のドパミン神経細胞が脱落し運動障害を起こす病気です。細胞が脱落-死ぬということはそこにレビー小体が現れるためであり、レビー小体と深い関係があります。このレビー小体はα-シヌクレインというタンパク質が主成分であることがわかりました。このα-シヌクレインが神経伝達物質のドパミンの放出をできにくくさせていき、ドパミンが脳幹の中脳黒質から大脳基底核(体のバランスや歩き方を司る重要な場所)にある線条体という神経細胞に送られてきます。ドパミンの量が少なくなってくると神経と神経を繋ぐネットワークをうまく動かすことができず、体のバランスが悪くなったり歩き方に支障が生じたりするのです。その悪化のスピードは何年もかかり少なくなっていくため徐々に体の動きが悪くなっていくのです。α-シヌクレインが正常の1.5倍、2倍に増えるとパーキンソン病になってしまいます。タンパク質の量が増えることについてはいろいろ原因があると思われますが今のところわからず難病になっています。レビー小体をなくす、つまりレビー小体の元となるタンパク質のα-シヌクレインを減らしてしまうような治療法ができれば、パーキンソン病の根本治療になると思われますがその方法がまだ難しいのです。
パーキンソン病の症状
パーキンソン病は主に50歳以降にはじまり、日本では10万人に100人程度の頻度で発病し徐々に進行悪化していく神経難病です。特に40歳未満で発病する若年性もあります。人によりそれぞれ異なった症状を呈しますが主な症状は次のようなものです。
1.手足の振るえ(震せん) 2.動きが遅くなる(無動) 3.筋肉がこわばる(固縮)
4.倒れやすくなる(姿勢反射障害)
この他痛み、便秘、排尿障害、臭覚の低下、睡眠障害、立ちくらみ、意欲の低下、抑うつ状況が伴うことがあります。このような症状に対する新しい薬が次々に開発されていますが、根治にはまだまだ遠い状況です。
パーキンソン病の薬
この病気はドパミンが足りないということでそれを補うLードパとドパミンとよく似た化学構造を持っているアゴニストが治療の中心となります。ドパミンはそのまま飲むと胃から吸収されてしまい脳まで行きません。Lードパは脳に入ってからドパミンに変わるものなので脳に行くことができます。Lードパの短所は飲んでいて効果がすぐに切れてしまうことです。また、血中にその成分濃度が高くなってしまうとジスキネジアという副作用が起こってきます。アゴニストはLードパの欠点を補うために出てきたものです。効果はLードパは長くて1.5時間くらいで、アゴニストは5時間以上あります。また、日内変動とかジスキネジアを起こしにくいといわれています。今の治療は症状が軽いときはアゴニストを、ある程度重くなってきたらLードパを使うことになっています。若い人はアゴニストを、症状が最初から重い人、お年よりは最初からLードパを使うことにしています。つまり症状が軽いときはアゴニスト、重くなってくるとLードパを使うことになります。アゴニストの短所は効果が弱いということです。Lードパとアゴニストをうまく組み合わせることです。アゴニストの副作用は一般的に消化器系統の症状、眠気、抹消性浮腫、幻覚が出てきたりします。一部のアゴニストに心臓弁膜症がおこります。
■主な抗パーキンソン薬の一覧
○Lードパ製剤
単剤 ドパゾール錠200mg ドパストンカプセル250mg
配合剤 ECードパール配合錠100mg マドパー配合錠100mg ネオドパゾー ル配合錠100mg メネシット配合錠100mg メネシット配合錠250mg
ネオドパストン配合錠100mg ネオドパストン配合錠250mg
〔作用〕脳内でドパミンに変わり不足しているドパミンを補います。脳内に
ドパミンを移行しやすくするレポドパ配合剤がもっぱら使用されています
〔主な副作用〕吐き気、食欲不振、不随意運動、幻覚、突発性睡眠、傾眠
○ドパミン受容体作動剤
麦角 パーロデル錠2.5mg ペルマックス錠50μg ペルマックス錠250μg
カバサール錠0.25mg カバサール錠1.0mg
非麦角 ビ・シフロール錠0.125mgビ・シフロール錠0.5mg ドミン錠0.4mg
レキップ錠0.25mg レキップ錠1mg レキップ錠2mg
〔作用〕脳内でドパミンを受け取る場所(受容体)を直接刺激しその働きを高め
ます
〔主な副作用〕吐き気、食欲不振、幻覚、眠気、突発性睡眠、傾眠、足の
むくみ、まれに麦核で見る心臓弁膜症
○選択的MAO-B阻害剤 エフピーOD錠2.5mg
〔作用〕ドパミンを分解する酵素の働きを抑えドパミンを有効利用します。
レポドパの減量に有効です。
OD錠:口腔内崩壊錠のこと。水なしで口腔内で崩壊します
〔主な副作用〕吐き気、食欲不振、不随意運動、幻覚
○COMT阻害剤 コムタン錠100mg
〔作用〕レポドパを分解する酵素の働きを抑えレポドパを有効利用します
〔主な副作用〕 吐き気、食欲不振、不随意運動、幻覚
○ノルアドレナリン補充剤 ドプスカプセル100mg ドプスカプセル200mg
〔作用〕脳内でアドレナリンに変わり、不足しているノルアドレナリンを
補います。すくみ足や起立性低血圧に有効です
〔主な副作用〕吐き気、頭痛、頭が重い、血圧上昇、幻覚
○ドパミン放出促進剤 シンメトレル錠50mg シンメトレル錠100mg
〔作用〕神経細胞からのドパミンの放出を促進します
〔主な副作用〕幻覚、せん妄、不眠、網状皮斑
○抗コリン剤 アーテン錠2mg アキネトン錠1mg
〔作用〕ドパミンの減少により優位に強くなっているコリン系を抑えて
バランスを調整します。
トリモール、パーキン等もあります
〔主な副作用〕口・喉の渇き、尿が出にくい、便秘、記憶障害、せん妄
○レポドパ賦活型製剤 トレリーフ錠25mg
〔作用〕脳内のドパミン量を上昇させます
〔主な副作用〕眠気、食欲不振、吐き気、気力低下、幻覚